埋もれ木のゆくえ

 化石になる方法を考える。身体組織が置換されて、文字通り石と化すこと。アンモライトや、黄鉄鉱やオパールに置換されたアンモナイトの化石のことを考えると、宝石の身体になることも不可能ではないような気がしてくる。酸化鉄の赤が入った珪化木なんかも素敵だ。どうせならそういう石の身体になれるといい。

 すこし調べてみたところ、化石化のためには、大洪水に飲み込まれて一気に地中深くまで埋没するのが理想的なのではないかという考えに至る。低酸素状態で腐食を避けることができ、水が浸透し、他の生物の影響を受けにくい。

 分解され、単純な有機物・無機物となり、他の動植物に利用されるという循環。そういったサイクルから外れ、堆積する地層の中に埋没し、石になる。それは成仏みたいなものなのかもしれない。石になる前に、猿ヶ森ヒバ埋没林の埋もれ木を見に行きたい。

 循環のシステムはすこしおそろしい、そのことを時々思い出す。自然界に漏出したプラスチックはマイクロプラスチックとなり、それを例えば海洋生物なんかが摂取したりすると、やがて生物濃縮によって人間の体内に還りつき、蓄積されてゆく。平均的な米国人は一週間でクレジットカード約一枚分のプラスチックを摂取している、というのを読んだことがある。例えばわたしが海を漂ったらその身体は、海洋生物を通していずれまた別の人間を形成する物質として利用されたりするのだろうか。では、わたしの身体を形成しているこれら諸物質は、どこからきたのか。人間も石もその途方もなさと不気味さにおいて大差ないなと思う。

 大洪水が飲み込んだものはいま、循環しているのか、埋没しているのか。いずれにせよ、それとわかる形で再会できることはおそらくないのだが、気づけばまたその行方を想像してしまっている自分がいる。